1割強に当たる18人が高校段階に進まず
2009年9月5日
朝日新聞 「中高一貫九段校で1割が高校段階進まず 転学勧められる」
中高6年間で一貫教育をする東京都の千代田区立九段中等教育学校で、中学段階を終えた1期生の生徒のうち、1割強に当たる18人が高校段階に進まず、他の学校に入学していたことがわかった。「学習態度に問題がある」などとして、別の高校への進学を勧めた生徒が多く含まれていたという。
九段中等教育学校は、千代田区が都立九段高校を都から譲り受け、06年に開校した。同校によると、同年の入学者選抜で合格した「入試1期生」は昨年4月時点で160人が在籍していたが、今年4月、高校段階に当たる後期課程に進む際、18人が外部の学校に進んだ。
学校側は、これらの生徒の多くについて「授業中にノートをとらなかったり、学校が求める補習に参加しなかったりなど学習態度に問題があった」としている。保護者を交えて面接し、「高校で授業についていけず、留年の可能性もある」などと話して外部進学を選択肢として示したという。高木克校長は「いずれの場合も保護者を含めて納得した上での選択だった」と言う。
九段中等教育学校の転学者の多さの背景には、独自の入学選抜制度もある。同校は1学年の定員160人を80人ずつ、千代田区民と、区民以外の都民の2グループに分けて募集する。09年度の入学者選抜の倍率は「区民枠」1.7倍に対し、「都民枠」10.0倍と大きな差がある。高校段階に進まなかった18人のうち、区民枠が16人を占めるという。
公立の中高一貫校は、私学志向が強い大都市圏を中心に、「公立復権」のてこ入れ策として相次いで設立されている。既存の高校に付属中学を新設する例が多いが、九段のように「中等教育学校」とし、一つの学校として一体的に教育する学校も全国で20校ある(08年4月現在)。進学指導に力を入れているところが多く、九段中等教育学校も、中高6年の学習内容を高2でほぼ終わらせる。予備校による土曜講座なども設けている。
東京都教委によると、都立の中高一貫校で高校段階に進んだ生徒がいる学校は4校あるが、今年度、内部進学せずに外部の学校に入った生徒は全部で5人程度にとどまるという。都教委都立学校教育部は「6年間での教育が前提であり、仮に学力差があってもきめ細かな指導で対応している」と話す。
千代田区教委の内藤千春・統括指導主事は「6年間の一貫教育の学校として、大きな課題と受け止めている。習熟度別の授業など、個々の生徒に応じた指導を充実させたい」としている。
公立の中高一貫校をめぐっては、入学選抜の問題が難しく、難関化して「とても小学校の学習内容では対応できない」「公立の教育のあり方から外れている」といった批判が出ている。文部科学相の諮問機関・中央教育審議会も検証を始めている。(宮本茂頼)
これに対して九段中学では記事は正確ではないと猛抗議を行っています。
以下、九段中学の抗議書より
平成21年9月12日
朝日新聞社
代表取締役社長
秋山 耿太郎 様
千代田区立九段中等教育学校長
髙 木 克
本校にかかわる掲載記事についての抗議書
本校にかかわる掲載記事につきまして、以下のとおり抗議いたします。
つきましては、御社の見解とその詳細をお知らせいただくとともに、今後の対応についてご回答いただきますようお願いいたします。
本校は平成18年度「公教育の復権」を掲げ、都民及び区民の大いなる期待を受けて開校いたしました。伝統ある東京都立九段高等学校の伝統を引き継ぎ、区立初の中等教育学校として、『豊かな心 知の創造』を学校目標に、今年度初めて、旧区立九段中学校から特別編入学をした5年生及び6年生と、適性検査を経て入学した4年生から1年生まで、6学年の生徒がそろった年度を迎えました。
開校以来、4年間にわたっての都民及び区民の安定した受検者数は、本校の日々の取組が保護者及び地域、受検者層である小学生保護者から、厚い信頼が寄せられている証であると自負しています。また64年にも及ぶ都立九段高等学校同窓会の皆様からも深い信頼を得て、教育施策への協力をいただいており、「九段」の名を引き継いだ責任も重く受け止めています。
しかしながら、平成21年9月5日(土)御社夕刊一面に掲載された宮本茂頼記者による記事によって、本校の教育施策は、「学校の責任放棄」と切り捨てられました。
予め結論があった上での取材と考えざるを得ません。この事を危惧し、宮本記者からの取材を受けるに当たっては、公平・公正な取り扱いを要求し、同記者も了承したので、取材に応じたものです。取材の際は、生徒個人のプライバシーに配慮しつつ、かなり率直な内容の話を提供したつもりです。しかるに、掲載された記事は取材内容の4 分の1 にも満たないもので、結論に合うように校長発言を切り取った内容です。
結果として、ICU教授のコメントに見られるように、学校批判、教育方針批判一色の記事構成となっています。宮本記者にその旨を問いただしたところ、その弁明は要領を得ないものでしたので、ここに改めて、責任ある立場の方に強く抗議する次第です。
編集方針に口を挟むつもりはありませんが、何の権利があって、本校のこれまでの努力と成果を踏みにじる記事とされたのか、そして、この記事掲載をもって何を読者に訴えたかったでしょうか。異なる見解があるにもかかわらず、一面的な見方しか掲載しない記事構成が、果たして、約束した公平・公正な取り扱いなのでしょうか。
中高生の時代から朝日新聞を愛読してきた者としても、適正な取材と信じ、情報提供をした者としても残念でなりません。 あってはならない、そして御社の「高い倫理観をもち、言論・報道機関としての責務を全うすべく」という理念に沿わない偏った記事構成ではないでしょうか。
宮本記者に話をしたように、本校の抱える課題には大きなものがあります。都立中高一貫教育校にはない受験区分の在り方、区立中等教育学校としての使命、そして開設当初から教育理念として掲げた教育施策の実現等については、取材時に十分なご説明をいたしました。義務教育段階の3年生から高校段階に至る4年生になる際に、本校は、家庭とともに面談を幾度となく重ね、一人一人の生徒の進路について真剣に考える機会をもっていることは、繰り返しお伝えしました。その取材結果が「学校の責任放棄」で終わったことについては憤懣やるかたないものがあります。なぜ、本校が「生徒を切り捨てている」という非難を受けることになるのでしょうか。
表層だけを見るのではなく、本校が願う生徒一人一人の将来を考えた取組としての記事があって然るべきでした。
そして、まるで高等学校が義務教育であるかのような書き方には問題が多すぎます。中高一貫教育に対する御社のスタンスは、私立偏重、公立無用の立場ということはかねてより実感していましたが、今回の記事内容からすると、取材対象とすべきもっと大きな問題は他にたくさんあるように思います。この点でも、取材の意図が見え見えに思われてなりません。
何よりも問題なのは,今の高校教育のどこに問題があり,どうしたらよいのかという視点を全く持っていないことです。問題の底に中高接続問題があることは明確ですし、そして、今盛んに議論されている高大接続や、高校生の学力保証の問題とも深くかかわってくることです。個別に切り離して論ずることの出来ない事象と思います。
ただ、学校の救いは、当該の掲載記事を見た900名近い保護者の学校に対する信頼は揺らいでいないことと、本校の売りである生徒と教職員は、いつもと同じように明るく元気なことです。保護者や全国の大学、高校関係者から激励のメールや手紙を頂戴していますが、「あの内容で、何を意図した全国紙一面なのか」「ICU教授コメントは、現場を知らない者の勝手な言い分」というのがその内容で、御社の記事構成に疑問を呈するものばかりです。また、本校にかかわりの深い有識者からは、「何を記事にしているのか。朝日新聞社の見識を疑う。」という怒りの便りも寄せられています。
千代田区立中等教育学校として、受験区分の在り方は学校の設置者サイドで何度も検討されてきたことであり、本校が立ち入ることが許されていない課題です。しかしながら、これまで教職員が、生徒一人一人に深い愛情を注ぎ、苦しみ悩みながら育成に当たってきた努力(この事も取材の際申し上げました)を切って捨てた、御社の記事に対して、学校が納得いく回答をお待ちしています。